酔いしれる情緒


いや、隠すのはアンタの方でしょ。


なんて。



そうツッコミを入れようとしたが、春の腕によってしっかり固定されているから身動きがとれない体勢で。





「凛、今日仕事何時まで?」


「え…?」


「仕事終わる時間」


「………13時、だけど」





こんな時にする話か?



そう疑問に思うも、





「なるほど…」





その後スグに春の口角がニヤリと上がったのを私は見逃さなかった。




なんだろう………途轍もなく、嫌な予感。





「橋本さんって本屋で働いた経験あるよね」


「ん?ああ、あるけど。学生の頃に4年間。」


「じゃあ大体分かるか」


「は?分かる?」





二人の会話を春の腕の中に包まれながら耳にする。




ああ、やばい。



煩くてめんどくさい奴(慎二くん)がいよいよこっちに────







「………………おい、まさか。」







何かを悟ったかのような、

そんな言葉を発した橋本。



私は近づいてくる慎二くんから橋本に視線を移した─────瞬間だった。







「っ!? ギャッ!!」






突如、身体が宙に浮いた。



もちろん誰かの支えがあって私の足は地につかなくなったわけで。





この体勢………お姫様抱っこと言うのだろうか。




私を抱き抱える春と

これでもかと密着していて…





「そのまさかだよ!」


「ぅわあ!?」





その体勢のまま急に走り出すから


慌てて春の首に腕を回した。





お、落ちる…!

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