酔いしれる情緒
「何を…撮られたの?」
女子大生がその交際匂わせという証拠を見たとき「ほんとだ~」と納得するくらいなのだから、付き合ってることが丸わかりのような写真を撮られたんだと思った。
例えば……今私達がしているような、
こうやって手を繋いでる瞬間とか
世間が騒ぐくらいなんだから
もっと過激な…添い寝してるところ、とか。
想像しただけでも胸がモヤモヤする。
だって私、
演技中のキスシーンでさえにも妬くんだから。
すると春は少し驚いた顔を見せた。
「あれ、知らないの?
その写真見たから聞いてきたんだと思った」
「あれは店に来てたお客さんが話してたのを聞いただけで……それ以外は何も知らない。」
「調べたりもしなかったんだ?」
結構広まってたよ?
そう言う春に私は首を横に振る。
「………、だって」
「うん」
弱気な口調。弱気な私。
こんなの自分らしくないけど
「それが事実だって知れば不安で胸が苦しくなる」
そう素直に言って、
笑われたりしないだろうか。
「だから怖くて調べられなかった」
それとも……くだらないって、呆れる?
「………私、」
いや、違うな。
コイツは笑ったり呆れたりしない。
「春が思う以上に春のことが好きだよ」
強がりな私が素直になれば
春はいつも心底嬉しそうな顔をするんだ。