酔いしれる情緒
「………………」
コトッ、とマグカップが机に当たる音。
それはコイツが机の上に置いたから。
マグカップの中身は半分くらいまで減っていた。
「んー…どうだろう?
言われてると思うけど、俺テレビ見ないから分かんないんだよね~
なんで?」
ニコッと微笑むコイツ。
だけど、口元はまだ苦さが残っているのか、笑みはない。
「いや……特に意味はないけど」
「そー?」
「(気のせい…か。)」
気になるけど、ハッキリとあのCMを見ていないから、言い切れない。
再び止めた手を動かして、一旦気持ちを落ち着かせようとコーヒーを飲む。
「凛、ブラック飲めるの?」
「苦くない?」と呟くソイツは、半分残ったコーヒーにミルクと砂糖を入れている。
「私、甘いの苦手だから」
「あっ、そうなんだ。
初めて知った~ 覚えておくね?」
「いや覚えなくていいけど」
そう言うコイツはきっと甘い物が好き。
だってコーヒーに大量の砂糖を入れていたから。
その姿を「(私と正反対だなー)」と思いながら見ていた。