酔いしれる情緒




少し経ってレジが落ち着き


私はかなり減ったあの小説を追加補充していた。




(一ノ瀬…櫂)




手に取って、


帯に書かれた文字


『一ノ瀬 櫂(イチノセ カイ)』


を読む。




きっと、この人が主演を務めているから、こんなに売れているだと思う。


この間の高校生も"カイが主演の映画"と言いながら手に取っていたから。




……人気俳優の力って、凄いな。




私が補充している間も


その本を手に取っていく人がチラホラといた。



その大半が、女性だ。





「安藤さん、もう上がっていいよ~」

「あっ、じゃあ補充し終えたら上がります」




そういえば、今日は昼上がりだったっけ。



すっかり忘れていたその事。





持っていた本を急ぐように戻すと、


その本はあっという間にまた違う誰かの手へと渡った。

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