酔いしれる情緒




家に着くとロボット掃除機がいつものように出迎えてくれた。



この空間に入ると緊張していた身体がホッと落ち着く感じ。


自分の家に帰って来たような、そんな安心感。




……まあ、一応、自分の家でもあるんだけどね。




胸を撫で下ろして、靴を脱ぐ。




と。



(………、…あれ)




靴が…ある。




ふと、朝は無かったその靴を見つけた。



……春の靴だ。




(帰ってるの?)




恐る恐る中へと入り、


閉められているドアを開ければ



ソファーの上でスースーと寝息を立てて眠る、春の姿を見つけた。




(帰ってきてたんだ…)




春も、昼上がりだったんだ。




自然と身体が春の元へと向かう。


近くに来ると、目を閉じて気持ちよさそうに眠る春が瞳いっぱいに映る。




(ほんと、綺麗な顔…)




寝顔でさえも綺麗で、…なんかムカつく。




(……まつ毛長い)




その整った顔を近くで見たくて


至近距離で眺めていれば





「ん……」


「!!」





寝返りを打つ春に、ハッと気がついて、慌てて離れる。




(危ない危ない…)




眺めていた事、バレるところだった。



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