酔いしれる情緒



(近いっ……)




早くこの状況から離れたくて

逃げたくて

至近距離にいる彼とは目を合わせずに





「……は、る……」





目線を下に向けて、そう言った。




綺麗な顔を直視してしまうと


息が、詰まってしまうから。





「もう…いいでしょ…」





離して。と、言わんばかりに春を見つめた。




ほら、直視すると、


…息が詰まる。





そんな私を春はいつも通りに笑みを浮かべていて


その顔はどこか楽しそうで





「抱きしめてもいい?」

「無理。」





それはキッパリと断らせてもらった。



コイツに抱きつかれると、そう簡単には離してくれない事を知っているから。


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