酔いしれる情緒
「……ご飯、冷めるよ」
「うん、ごめん。」
「(謝ってばっか…)」
謝るくらいならさっさとどけ。
そう言ってやりたい気持ちもあるけれど、
(また温め直せばいっか……)
なんて。
そんな事を思う私は、
きっと春に気を許してしまってる。
(髪の毛ふわふわ…)
耳に当たる春の髪はとても柔らかい。
そんな事に気がついたのは今日が初めてではない。
今までずっと、そう思ってた。
柔らかそうな髪だな~、と。
そんな髪が目の前にあるのだから
触ってみたい、という気持ちになってしまってもおかしくないと思う。
コイツも、勝手に抱きついてきているんだから
髪触るくらい…いいよね?
躊躇はなく、軽く春の髪に触れる。
ふわり、と柔らかい髪質に驚きながらも
頭を撫でるようにして、触った。
サラサラで、綺麗で、ふわふわと。
傷んでいるところなんて無さそうで
ずっと、触っていたいと思った。
と。
「………凛。」
耳元で、私を呼ぶ声。
その声はさっきと違って────
「そんな事されたら、俺、我慢できなくなる」
少し、余裕がなさそうな。