酔いしれる情緒
「あっ、」
その言葉に、咄嗟に手を引っ込めた。
だけどその行動は少し遅かったみたいで
私を挟むようにして
テーブルに手をつく、春。
綺麗な顔がドアップで瞳に映る。
やばい、気を許しすぎた。
頭を撫でた事に今更後悔する私。
「こっち見て。」
その言葉に、ドキッ、と胸が鳴る。
この時の春は
いつものようにふわふわとした表情ではなく
" 男 "の顔をしていた。
「っ…………」
だから
アンタの顔を直視すると
息が詰まるんだって…
何も言わない、いや、言えない私に
春が徐々に距離を縮める。
(ダメ…許しちゃ、)
百歩譲って抱きつく事は許してあげてもいい
だけど─────キスは、ダメだ。
もう少しで触れてしまう、その瞬間に春の口元へ手を当てた。
「っ…、春、キスはダメ、」
ドキドキとうるさい鼓動は未だに鳴り止まなくて
私は春にその音を聞かれるのが嫌で、
「……ご飯温め直すから、早くどいて」
冷たい事を言う。