酔いしれる情緒
_________________________________
私達は向かい合うようにして夕食を食べる。
さっきの事もあってか
今日の春はいつものように「美味しい美味しい」とは言わず、
「………………」
とても静かだ。
(………拗ねてる?)
キスを阻まれたから拗ねているんだと思った。
分かりやすく何も喋らないからきっとそうだと思って。
悪いのはどう考えても私じゃないのに
無言で食べ進める春を見ていると「なんか、ごめん。」なんて言葉を言いかけた。
いや、私悪くないよね?
悪くないけど
この空気感はすごく嫌いだ。
「ねぇ、」
声をかけると、さっきまで交わることのなかったその瞳が私へと向く。
「恋愛モノ、好きなの?」
「…………えっ?」
「小説。さっき読んでいたでしょ」
咄嗟に出た内容はその事だった。
知らなくてもいい事。
だけど、さっさとこの気持ち悪い空気感をどうにかしたくて。