酔いしれる情緒
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残り少なかったグラタンもあっという間になくなってしまって、
「…………………」
私は春の部屋の前にいる。
入るのを躊躇っている、そういう事だ。
食器を洗っている間
ずっと行くか行かないかを考えてた。
行って損をするかもしれない。
行かなくてもきっと損はしない。
だったら行かない方がいいんじゃ?
"きっと、凛、喜ぶよ。"
そう春は言っていたけど
私が喜ぶことってなんだろう。
考えても、なかなか思い浮かばない。
自分の事なのに、
自分の事をあまり分かっていない私。
それを、春は、分かっているの?
(………やっぱり、やめておこう)
きっと騙されてる。
襲われるかもしれない。
男の部屋なんて、入るだけでも危険だ。
この間春も言っていたじゃないか
"男って、凛が思ってるよりも力強いんだよ?"
って。
見た目は細く見えるけど、私よりも力が強い春に襲われでもしたらきっと抵抗なんて出来ない。
それをこの間、気づかされた。