酔いしれる情緒
部屋の中は黒色で統一されていて、
とても男っぽい部屋だ。
初めて踏み入れた場所に自然と周りを見渡してしまう。
「どう?想像通りの部屋だった?」
顔を覗き込むようにして私の顔を見る、春。
「まあ…うん。掃除しない割に綺麗ね」
「ちょっと片付けたんだ。凛を部屋に入れると思うと綺麗にしとかなきゃと思ってさ」
「本当はこんなに綺麗じゃない」と、珍しく苦笑いを浮かべる。
だから先に部屋に戻ったのか。
「部屋の紹介をしたかったわけ?」
「まさか~」
こっち、と
私の手を取って
部屋の奥へと連れられる。
そこにはまたドアがあって
そこをなんの躊躇いもなく開ける春を後ろから見つめていれば
「……凄い」
思わず声が出るくらいに
その中は沢山の本でいっぱいだった。
「有名な本ばかりだけどね。凛の事だからほとんど読んだ事があるんじゃないかな?」
そう言われ本棚をジッと眺めてみる。
確かに読んだことのある本があるものの
もちろん、知らない本もある。
知らない、というか、読んだことの無いもの。
「これ……全部、読んだの?」
「ううん、全く。ほとんど貰い物でさ、貰っても読む暇なくて一度も読んでない。」
「(また貰い物……)」
食材の次は本まで。
ほんとコイツは一体何者なんだ。