酔いしれる情緒
人生初のキスは
軽いものではなく
少し長いキスだった。
一瞬だと思っていたそれが意外にも長くて、
「んっ、」と声を漏らせばゆっくりと離れていく。
「あー……」
春は「やってしまった…」と後悔しているような顔を見せていて
「……出て行かないで」
壁に押さえ付けられている手首を離そうとはしない。
寧ろちょっとだけ力が強くなった気がする。
「凛、」
「………………」
「…お願い。」
再び苦しそうに顔を歪めるから
「………出て行かないってば」
もちろん"YES"の返事をしてしまう。
正直に言うと、
出て行こうという気持ちにはならなかった。
「キスぐらいじゃ、出て行かない」
無意識に行ってしまったそのセリフ
言ってから気づいた
(あっ、私、とんでもないこと言った。)
と。