酔いしれる情緒






「はーいっ」




意外にもすんなり離れてくれたことにホッと安心するのも束の間。




「あれ、凛────」




腕を引っ張られて





「煙草、吸ってるの?」





私の首元に近づく春は

クンクンと匂いを嗅ぐ。





「あー……」





仕事着のままだから煙草の匂いがするんだ。





「吸ってないよ。慎二くんが吸ってたから、服に染み付いちゃったのかも」





あの時2本も吸っていたし。染み付くのも無理ないなと、今になって吸っていいよって言ったことに後悔した。





「シンジ、くん?」


「うん。ごめん、匂うよね?着替えてくる」





春に言われてなかったら気づかなかったかも。



私が今煙草臭いんだということに気づいて、着替えるために部屋に行こうとした。




…………だけど





「………、春?」





掴まれた腕は離してくれない。




< 91 / 325 >

この作品をシェア

pagetop