酔いしれる情緒
後頭部に回った手のせいで引きつけられるようにしてされたキスは
昨日と違って少し荒々しく
強引にも噛みつくようなキスだった。
「シンジくんの話は禁止。」
離れると、はあ…っと息が漏れる。
そんな私と違って春はまだまだ余裕そう。
「分かった?」
「………………」
「凛。」
「分かった、ってば……」
頷くと、春は嬉しそうに微笑む。
さっきの鋭い目はどこにいったのやら。
「じゃあ着替えておいで。
それとも俺が着替えさせてあげようか?」
「結構です。」
春をその場に置いてリビングを出た。
クスリと笑う声が聞こえてきたけど、ムカつくから顔は見ないことに。
部屋に戻り、服を脱ぐ。
確かに煙草の匂いがする……
結構プンプン香るその匂いに眉根を寄せて床に脱ぎ捨てた。
こんなに匂い染みつくんだ。
この状態で仕事もしていたなんて、今まで気づかなかった私をぶん殴ってやりたい。
タンスから服を取り出し、着替える。
その際に部屋にある鏡で自分の姿を見れば、
「………、顔あっか……」
熱があるんじゃないかってくらい赤いその顔に驚いた。
(キスはしていいって、思ってるよね……)
………いや、
そう許可したのは
(私か……)
キスくらいじゃ出ていかないって……とんでもない事を言ったんだった。
ふぅ…と息を吐いて心を落ち着かせる。
そんな事で鼓動が鳴り止むわけはなく、
(平常心平常心平常心………)
またしても自分自身にそう言い聞かせるのだ。