酔いしれる情緒
「ごちそうさまでした!」
いつもながら綺麗に完食させたお皿を下に、手を合わせる春。
「今日も美味しかったです」
いつもそのセリフを言われるたびに照れ臭くなってしまう。素直に喜べばいいものの、冷たい返事しかできない。
少し経って私も食べ終えると同じタイミングでお皿をシンクに持って行く。
春は私が食べ終わるまでが食事だと思っているらしい。
「あーお腹いっぱい!」
「お風呂、もう沸いてるから入れるよ」
「ほんと?あー…でも俺はシャワーでいいや」
そう言う彼はシンクで洗い物をする私の横に来ると
「疲れた顔してる。お湯に浸かって疲れとっておいで?」
「いや、洗い物あるし」
「そんなの俺がしておくからさっ」
「は?あっ、ちょっと、」
洗い物を途中で止められると、軽く背中を押されてお風呂場へと連れてかれた。
「大丈夫。心配しなくても洗い物くらいは出来るから」
ニコッと微笑むと、
ゆっくりドアを閉められる。
(………ありがたいけど、)
本当に、出来る?
あがってから割れた食器が山積みになっていたらどうしよう。
そんな不安もありつつも
春の言う通り疲れている事には変わりなくて
やっとお風呂に浸かれると思うと少し幸せな気分になった。