酔いしれる情緒
「あれ?もう上がってたんだ」
声がして、ハッとその存在に気が付いた。
「あっ…うん、さっき、」
「ゆっくりできた?」
その言葉にコクリと頷く。
すると春は優しく微笑んで
「良かった良かった」
安心したかのような顔を浮かべた。
お風呂上がりの彼はまだ髪が少し濡れていて
なんだかとても色っぽく、暑いのか半袖を着ているから腕の筋肉が露わになっていた。
(細いくせに、筋肉あるんだ)
男の人ってみんなこんな感じなのかな。
ジッと見惚れていれば
「あ、その小説」
春は私の隣にストンと腰を下ろした。
「読んでるの?」
顔を覗き込むようにして見られると
フワッと香るお風呂上がりの香りが鼻をくすぐって、
「っ………」
自然と顔がそっぽを向く。
こんな事、意識してるって、分かりやすく教えているようなものだ。
ほら……クスクスと笑われているし。