俺の妻は腐女子ですがなんら問題ありません。〜最悪で最高の休日〜お礼SS
 行く気満々の美桜に押されて結局一時間で準備を終え姫咲のアパートへ向かった。
 まだ朝の七時。夏の終わりの九月下旬、半袖だと少し朝は肌寒い。
 アパートのインターホンを鳴らすとガチャリとドアが開いた。「おはようございます」とぬるっと広志さんが出てきたのに俺は驚いたが美桜は全く動じずに「おはようございます!」と体育会系の学生のような大きな声で挨拶を返していた。そっちにもかなり驚いた。

「どうぞ、お入りください」

 つ、ついにこの一歩を入れてしまえばなかなか帰る事は許されないだろう。何をさせられるのか……また広志さんと絡めとか言うのだろうか。

「隆ちゃん、そんな所に立ってないで早く入らないとお姉さん待ってるよ?」

 背中に美桜の小さくて可愛い両手がピッタリとくっつき、徐にぐいぐい押されてリビングまで来てしまった。

「おっ、一時間で来るとはお主達やるねぇ。じゃあ手始めに広志の後ろから抱きついて首元にキスするかしないかの距離で覗き込む感じでこっち向いて」

 いつも通り中学のジャージにすっぴんお団子頭の姫咲。お団子は崩れかけてボロボロだし、目の下のクマが凄いことになっている。こんなに黒くてクマだと分かりやすいクマは見たことが無い。

「は、はぁ!? それは無理! 大体美桜が見てるんだぞ! 出来るわけ無いだろう」

 絶対に嫌だ。なに首元にキスって? 吸血鬼の漫画でも描くのか!?

「いいわよねぇ、美桜ちゃん」

 ギロリと獲物を捕らえたかのような視線は勿論美桜の元へ伸びている。
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