彼女がマスクを外さない
不意打ちで撮ったものの
恵美は綺麗にカメラ目線になっていて
「まって撮り直して」
「いいじゃん綺麗に写ってるし」
「笑ってないもん」
「マスクでどうせわかんねぇよ」
そう言えば、うっ、と残念そうに小さな声をあげ
「つ、次イルカショーみたい」
「ん。」
自然と話を逸らしてきた。
「もう始まるみたいだし急ぐぞ」
「え、まってまって」
「ほら早く」
俺に向かって伸びてきた手を優しく掴んで、走る。
俺と歩幅が全く違う事から俺は恵美に少しでも合わせようとはするものの
走るとなればそう簡単には合わす事はできなくて
「栄…ちゃんっ、はや、すぎ…」
「悪い悪い」
はぁはぁと息を荒れさす恵美の背中をさすって、落ち着かせる。
だけどイルカショーには間に合ったみたいだし、まあ良かった。