彼女がマスクを外さない






「(女子…?)」






後ろ姿からして、確実に女子って事は分かる。




いいな、私も一緒に喋りたい。




だけど移動教室。
遅刻したらあの先生めんどくさいし…




オロオロと迷って迷って
その場を行ったり来たりしてしまう私。




私に気づかないかな、なんてちょっとは期待してたりするものの




全く気づく気配すらない。





「(まあ結構離れてるし気づかないのも当然……)」




そしてまた目線をそっちに向けたときだった。





「あ…」




その女の子がポンっと栄ちゃんに触れる。
それは世に言うボディータッチそのものだった。




笑う栄ちゃん。
笑う女の子。




その瞬間、心の何処かでモヤッと霧がかかる。




いやでも話してるだけじゃん。
そんなの男と女が話すのなんて普通の事だし、それに…




ボディータッチは普通?
…普通か。普通だな。




そう自分自身で納得させる私。





「恵美ー!行くよ」


「あ、うん!」





友達に呼ばれ
私はその場から急いで離れた。




だけどまだ心の霧は晴れない。

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