彼女がマスクを外さない
「……あれ?恵美」
「あ、お疲れ」
先に帰っとくね。
そうは言ったものの
私は栄ちゃんのクラス、7組の扉の前で待っていた。
「先に帰ってるんじゃなかったのか?」
「気が変わった」
「なんだそれ」
そんな私に
ふっ、と笑う栄ちゃん。
の、後ろに
「ちょっと、栄介!あーもうこれとかガタガタじゃん…
ちゃんと綺麗に切ってよ!」
「ハサミ忘れたんだよ。
定規でやったんだから仕方がないだろ」
「栄介がこれ使ってよね。私はこっちの綺麗な方使うから」
目の前に繰り広げられる
栄ちゃんとあの子の会話。