彼女がマスクを外さない



「不安にならなくていい。
俺が今好きなのは恵美だよ」



ポンポン

背中を二回ほど軽く叩かれる



「…別に不安とかそんなの無いし」

「はいはい」

「ちょっと信じてない……っ!」



ムキになって顔を上にあげれば

間近に栄ちゃんの顔。



「……キスしてい?」



今日の私は、なかなか積極的だと思う。



でも、今は、

たまらなく栄ちゃんに触れたい。



そんな気持ち。



「…マスクしてたらできねーよ」

「あ。……じゃ、じゃあいいや」



マスク

今はどうしても外せない…



パッと下を向く

だけど



「別にいいよ。そのままでも」



栄ちゃんの手が私の後頭部に触れて



「ほら、目、閉じろ」



グッ、と近くなった距離に

私は静かに目を閉じたー。
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