彼女がマスクを外さない
雑ながらも
カバンの中に教科書、ノート、筆箱を全て放り入れる。
「恵美」
武智くん、とやらの近くにいる恵美に声をかければ
二人は同時に振り向いた。
武智くんって、こいつか。
黒髪でスポーツ刈り
俺よりも身長の高いこいつ。
恵美と並べば恵美が妹のように見えるくらい。
「じゃあね武智くん」
「おう。また明日な」
恵美が手を振ったのと同時に
バチッ
一瞬目が合った。
「…………」
だけどお互い
何もなかったかのように目線を逸らす。
武智くん…ね、
「でね武智くんって学年トップなんだよ凄いよね!」
「……へー」
「身長も高いし、もうどれもトップだと思うな」
「……ふーん」
帰り道の恵美は武智くん、武智くんって
さっきからずっとそればっかだ
…会えてよっぽど嬉しかったんだろーな。
武智くんに関して全く興味ない俺
聞いてて、余裕でつまらない。
「それで武智くんが…」
正直
ちょっと苛立った