彼女がマスクを外さない
「………、ねぇ栄ちゃん」
突然会話が止まったと思えば
クイー。
服の一部に軽い違和感
袖を引っ張られた。
「…なに?」
その場に立ち止まる。
けど、
振り向きはしない。
「なんか…怒ってる…?」
「別に」
「怒ってるじゃん」
「怒ってねぇーって」
怒ってるつもりじゃなかった
けど
そういう態度になってたらしい。
「ほら帰るぞ」
「…やだ。機嫌直して」
「だから…」
怒ってない
溜め息をついて振り返る。
と、
「………、なに。」
「ご、ごめんねの権威を示してます」
「なにそれ」
ギュウー。
振り向いた瞬間
その直後に真っ正面から
恵美に力強く抱き締められた。