彼女がマスクを外さない
「……………」
黙り込む恵美。
だけど
「………ご褒美…は?」
突然そう呟いた。
「ご褒美?」
「頑張ったらくれるって…」
ああ
あのテスト勉強の日にした約束か。
「頑張ったら、だろ?
だけどこの点数なら頑張ったって思えない」
テストの解答用紙を恵美に返す。
「で、でも…!」
それを受け取った恵美の手が少し震えていた。
「栄ちゃんはさみしくないの?私と離れてさみしくない?」
「だから………」
俺は溜め息出しながら言う。
「実力テストっていつ…」
手帳を胸ポケットから取り出して
パラパラとめくり始めた恵美。
そうやって探し出す恵美に
俺はその手帳をゆっくり取り上げた。
「さみしくない。」
留年されるよりかは
断然マシに決まってる