彼女がマスクを外さない



「……………」


黙り込む恵美。


だけど


「………ご褒美…は?」


突然そう呟いた。


「ご褒美?」

「頑張ったらくれるって…」


ああ

あのテスト勉強の日にした約束か。


「頑張ったら、だろ?
だけどこの点数なら頑張ったって思えない」


テストの解答用紙を恵美に返す。


「で、でも…!」


それを受け取った恵美の手が少し震えていた。


「栄ちゃんはさみしくないの?私と離れてさみしくない?」

「だから………」


俺は溜め息出しながら言う。


「実力テストっていつ…」


手帳を胸ポケットから取り出して

パラパラとめくり始めた恵美。


そうやって探し出す恵美に

俺はその手帳をゆっくり取り上げた。


「さみしくない。」


留年されるよりかは

断然マシに決まってる


< 32 / 75 >

この作品をシェア

pagetop