彼女がマスクを外さない
「…っ!」
目を見開く美羽に
俺はゆっくりと掴んだ腕を離す。
そして携帯をポケットへとしまった。
「…ごめん。ちょっと悪ノリし過ぎた」
掴まれた部分を
ギュッと美羽は自分の手で掴んでいて
それを横目に
「悪ノリし過ぎ」
フッと笑って見せた。
…今頃恵美は何してんだろ
ふと、そんな事を頭の片隅に思い浮かんだが
「(いやいや)」
それをなかったことに取り消す。
離れる決意
したのは自分。
そんな事を思ってどうする。
「……はぁ」
溜め息をつけば
「幸せ逃げるよ」
美羽がそう言う
「元から逃げてるし…」
「ふーん」
距離を置いてまだ初日
心はモヤモヤと晴れない状態
勉強なんて
逆に俺が出来そうにない。