彼女がマスクを外さない
「(あれ?恵美は…)」
気づけば隣に恵美がいなくて
何処行った?と店内を探し回ってみれば
アイスコーナーに恵美らしき姿。
声をかけようと思ったが
真剣に何かを見ているから、俺はこっそりと覗くようにそれを見る。
「(パイナップルマンゴー味?)」
恵美の目線の先は、かの有名な棒付きアイスキャンディーで
なんだ新商品か?
「欲しいの?」
「っ!」
突然俺が話しかけたからか
恵美はビクッと小さな身体を跳ねさせた。
「ううん。いらない」
だがすぐに冷静になって
首を小さく横に振ると今度はドリンクコーナーへと向かっていった。
「(素直に言えばいいのに)」
俺にまだ気をつかっているのだろうか。
それとも自分の中のプライドってものがあるのか?
なんていろいろと想像しながらも
俺はそのパイナップルマンゴー味のアイスを取り出してカゴに入れた。
「ほらっ」
会計を終えて
あのアイスを恵美に渡せば
マスクのせいで嬉しいのか全く分からないが
目をキラキラと輝かせていたのには気がついた。
「ありがとう…!」
「ん。」
背が低いから余計に
なんだか無邪気な子供にも見えてしまう。