彼女がマスクを外さない




「ふーん」


春ちゃんが私の机に頬杖をつく。

目線は窓の外に向かれていた。


私の席は窓際の1番後ろという最高にいい席で

だけど背の低い私にとっては

その席は苦痛で仕方がない場所。


「あれ、栄介くんじゃない?」

「え、どれ」


春ちゃんが窓の外を指差して

気づけば私もその方向へと目線がいく。


「栄介くんって7組?」

「うん」

「じゃあ次6、7組体育なんだ」


ジャージ姿の栄ちゃん


そんな見慣れていない姿に

見惚れていたのは事実で。


「(見るぐらいならいいよね)」


ひそかに見つめた。


「でも最近栄介くんさぁ」


そんな私に春ちゃんが

栄ちゃんの話題を出す。


「あの子と仲良いよね」


再度春ちゃんが指差す方向に


「どの子?」っと私も前のめりになって

その方向に目線を向ければ


「(あ…)」


栄ちゃんの元カノ

美羽ちゃんの姿。

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