彼女がマスクを外さない
「恵美~?自販機行かない?」
「行く行く」
昼休みになって、私は勉強道具を全て机の中にしまい込み
「喉乾いた~」っと、険しい表情をする春ちゃんと一緒に
一階にある自販機に向かった。
「うわっ、人多い…」
「げぇ…最悪だわ」
一階に下りると、昼休みって事もあってザワザワと賑わう。
「…どうする?辞めとく?」
うわぁ…って、表情が曇る春ちゃんは
この人の多さに嫌気がさしたらしい。
…でもせっかく来たんだから
「じゃあ私買ってくるからさ、春ちゃん購買行ってきなよ。どうせ行くつもりだったでしょ?」
なんだか私のこのサイズなら
この人の多さもすり抜けていけそうな気がする
…なんて、謎の自信。
「えー?んー。じゃあお願いしよっかな」
「ごめん、ありがと」っと呟く春ちゃん。
「りょーかい」
教室でね、っとお互い手を振って
私は自販機の元に向かった。
「(買えたし、帰ろっと)」
買うことはすんなりといけた
私の分と春ちゃんの分のジュースを両手で抱えて
来た道を戻る。
が。
ドンッ
「あ、ワリ。ごめんな」
「わっ…と」
瞬間、身体に強い衝撃。
人にぶつかってしまった私はヨロリとよろめいて、
抱えていたジュースが床へと落下した。