彼女がマスクを外さない
キャッチしたつもりだったけれど
見事にそれは私の手からすり抜けてしまったらしい。
「(あ。)」
そんな中
落としてしまったそれを拾ってくれた人がいて
春ちゃんの分を片手に持つ私に
「ごめんなさい、ありが……」
私の分を目の前に差し出してくれたその人に目線をあげれば
「っ!」
息が、瞬時につまった。
「ほら、」
ん。っと差し出されたジュース
久々に聞いた声
久々に間近で見た顔
「栄ちゃん……」
会っちゃった…
キュウゥ、っと胸が痛いほどに締め付ける
恐る恐る受けとったそれ
「ありがと……」
そう下を向いて呟いた。
「……………」
けど、栄ちゃんは何事もなかったかのように
スッ、と隣を通り過ぎて行く。
そっか…栄ちゃん7組だから…
ここは一階、7組は一階にある
会ってしまうのは仕方がない。