彼女がマスクを外さない
8day
「ほら、」
「栄ちゃん……」
久々に恵美に会った。
恵美は俺を見て、
気まずそうに下を向き、目線を合わせようとはしなかった。
「栄介、勉強教えて」
「無理」
「教えろ」
「なんで命令口調なんだよ」
あれからもう何日か経ち
あと一週間ちょいで実力テストらしい。
どうりで美羽が「勉強教えろ」ってうるさい筈だ。
「もうほんと留年かもしれない」
「お疲れ」
「おい」
無理、って言ってるにも関わらず
美羽は俺の机の上に大量の問題集を持ってくる。
ドサッ、と置かれたそれ
はぁ…っと溜め息をつきながらも、俺はその問題集に手を伸ばす
「部活休んでんだろ?だったら家で勉強出来るだろ」
「家に帰っても病院行かないといけないし、時間無いの」
「だから助けて」っと、ヘルプ信号を出す美羽
そんな俺はチラリと美羽の足元を見つめた。
「……………」
…仕方がないか。
「…俺じゃなくてもいいんじゃねーの?」
俺も偉いって程でもないのに、なぜ俺に頼むかが疑問だ。
「栄介がいいから頼んでんの。前、おかげさまで赤点まぬがれたしね」
そう言いながら美羽はシャーペンを取り出して
「ココ、教えて」と俺にすがる。
そんな中、俺は再び溜め息をついた。
……恵美は大丈夫なのだろうか
今回はちゃんと勉強に集中出来ているのだろうか