彼女がマスクを外さない




「でも恵美ちゃんって身長ほんとちっせぇよな」

「隣にいたやつと身長差ありすぎ。あれ誰だっけ?」


どうやら恵美は誰かと一緒に登校してたらしく


俺は美羽に数学を教えながら

「ふーん」っと話を聞く。


「バスケ部のキャプテンだろ?確か名前は……」


一人の友達が考え込むと


…バスケ部のキャプテン?

その言葉に少し違和感を持った。


と。


「武智湊、だろ?」


もう一人の友達がそう名前を出した瞬間


「…………」


ピタッと俺は動きを止めた

「なに?どうしたの」って美羽は不思議そうに顔を覗き込んでくる。


武智って…


図書館で会った、あいつの顔が脳内を横切った。


……あいつか。


「ああ、それそれ。そいつだ。栄介~ほっといていーのかよ」


ポン、と俺の肩に手を置く友達。

ムッと俺は眉根を寄せた。


「………なにが」

「恵美ちゃんだよ恵美ちゃん。一緒に登校してたぞ武智湊と」


そして

もう一人の友達が言う


「浮気、されてるんじゃねーの?」


少し楽しげに。


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