彼女がマスクを外さない
しっかりとアイスの袋を持ち
開けようとしていたのを見て
「(おっ、マスク外すか?)」
食べるならマスク外さないと食べれねぇよな。
なんてちょっと期待する俺。
だが
「…………」
恵美も何か感づいたように途中で動きを止めた。
「食わねぇの?」
「ん…家帰って食べる」
「溶けるぞ」
「と、溶けた方が好き」
「もうそれアイスじゃねーじゃん」
そう言えば恵美は「うっ」と低い声を出して俯いた。
…なんだよ。
そんなに俺に顔を見せるのが嫌かっ
「ジュ、ジュースとして飲んでみたいの」
「ふーん、変わった趣味をお持ちで」
「うっ」
一応最後までねばって、遠回しに今食べろと言ってみたものの
結局食べようとはしなかった。
もうあのアイス、ドロドロなはずなのに。
まあでもパイナップルマンゴー味なんて溶けても美味しいと思うけど。