彼女がマスクを外さない





しっかりとアイスの袋を持ち
開けようとしていたのを見て





「(おっ、マスク外すか?)」





食べるならマスク外さないと食べれねぇよな。




なんてちょっと期待する俺。




だが





「…………」





恵美も何か感づいたように途中で動きを止めた。





「食わねぇの?」


「ん…家帰って食べる」


「溶けるぞ」


「と、溶けた方が好き」


「もうそれアイスじゃねーじゃん」





そう言えば恵美は「うっ」と低い声を出して俯いた。




…なんだよ。
そんなに俺に顔を見せるのが嫌かっ





「ジュ、ジュースとして飲んでみたいの」


「ふーん、変わった趣味をお持ちで」


「うっ」





一応最後までねばって、遠回しに今食べろと言ってみたものの
結局食べようとはしなかった。




もうあのアイス、ドロドロなはずなのに。




まあでもパイナップルマンゴー味なんて溶けても美味しいと思うけど。
< 5 / 75 >

この作品をシェア

pagetop