彼女がマスクを外さない
その後、休み時間終了のチャイムが鳴り
漫画を読む奴も、携帯を触る奴も
いっせいに机の中に隠すように片付けた。
そのチャイムは
空気を読んでくれたのか
読んでくれていないのか
結局、恵美の所には行けず。
「次の時間もお願いしてもいい?」
そう言って俺の腕から手を離すと
美羽は俺の返事を聞く前に
ヒョコヒョコと片足を引きずりながら自分の席へと戻っていく。
「…………ああ。」
俺は静かにそう呟いた。
そんな美羽の片足の足首付近には包帯が巻かれていて、
部活で足を挫いたらしく捻挫らしい。
今日もどうやら病院に行くみたいで
この前から何かとお願いされることが多い俺。
最近は一緒に帰って欲しいとの事。
「支えが合った方が痛くないから」って、そういう理由で
「他の人に頼めよ」とは言ったものの、
「方向がほとんど一緒なのは栄介だけなの」と、再度お願いされる。
こういう事に断れない自分も悪いのだが
まあ帰るだけなら…と、軽く受け入れてしまった。