彼女がマスクを外さない



「(……それにしても)」


恵美がマスクを外していたらしく

オマケに化粧までしていたらしい。


俺のいない所ではマスクを付けていない時もあるというが

「(いきなりどうしたんだ、アイツ…)」


『一緒に登校してたぞ武智湊と』

友達が言ったその言葉が脳内で嫌なほどにループする。


『浮気、されてんじゃねーの?』


…んなわけねーだろ。


俺は静かに溜め息をついた。




「あ、分かった。だからこうなるんだ」

「そうそう。で、これが…」


休み時間はほぼ美羽につきっきりで勉強を教えて

なんとか美羽も

欠点を取らなさそうなくらいにはなった。


恵美と比べてみれば

美羽はまだ覚える要領がいいみたいで


「これは、これでしょ」

「ん。合ってる」

「よっしゃ」


とりあえず教えた事は

全て暗記できるタイプ。


「うわ、もうこんな時間なんだ。ごめんね遅くまで」


美羽の目線が時計の方に向けば

少し焦ったようなトーンでそう言った。


気づけば時計の針は午後5時になろうとしていたところで

「助かったよ、ありがとう」っと笑顔を向ける美羽。

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