彼女がマスクを外さない
「ああ。じゃあそろそろ帰るぞ」
実テまで後一週間ちょい。
それまで忘れずにいてくれたらいいのだが。
帰る準備をする俺
だが、ジッと見つめられているような視線を感じて
「……なに」
ゆっくりと視線を合わせた。
視線の先は机に頬杖をつく美羽で
目が合うと、
「…………」
美羽は静かに目線を下に向ける。
「……、ねえ栄介」
そして何か覚悟を決めたかのように顔を上げると
「…私達、やっぱりやり直せないかな」
ゆっくりと、
ちゃんと俺に聞こえる声で
少しさみしげに顔を歪めた。
「……は?」
衝撃の言葉に、
ピクッと眉根を寄せて美羽を見れば
「やっぱり私、栄介が好き。やり直したい。…あの時フラなければ良かったって後悔してる」
突然、美羽の目から溢れるように零れ始めた涙を見て
ギョッと驚き反応する俺だけど
「……………ごめん。俺はもう恵美しか好きになれない」
キッパリと
断るように
「………そっ…かぁ…」
ゴシゴシと目をこする美羽に対して
そう告げた。