彼女がマスクを外さない
『一緒に帰ってたよ』
『浮気されてるんじゃない?』
美羽ちゃんを見てしまったら
友達に言われたそれを思い出してしまう。
栄ちゃんがそんな事…
するわけない…。
そうは信じていたとしても
真相が知りたいのも事実。
……ねえ、それって本当なの?
「あっ、の!」
気づけば、私は美羽ちゃんを呼びとめていた
精一杯に出した声
彼女は聞こえたのであろう、キョトンとした表情で振り向き
私を見ていた。
震える手を、キュッと力を込めて、握る
緊張しているから、心臓が暴れてうるさい。
「その……。」
なんで呼びとめてしまったんだろ。
ちゃんと喋れないくせに、と。後悔してしまう私。
だけど呼びとめてしまったんだ。
その事に関しては変わりない。
下を向いていた顔を、ゆっくりとあげる。
だから、
堂々としなきゃ。
「聞きたい事が、あるの」
不思議そうに首を傾げる美羽ちゃんに
しっかりと目を見てそう告げた。