彼女がマスクを外さない
「フッたのは、私」
だけど美羽ちゃんはなんの躊躇いもなく話していく、過去の事。
「…………」
私は何も言えず
静かに聞いているしか出来なかった。
正直言って、
聞きたいと思う気持ちの方が大きかったのかもしれない。
「私と栄介、付き合って結構長かったの。
喧嘩も何回かあった。
けどその度にちゃんと仲直りはしていたし、”別れる”なんて言葉は考えられなかった」
キュッ、とスカートの裾を握り締める美羽ちゃん。
「………でも、高校生になった頃からだったかな。
栄介が違う子を目で追うようになったの。
……なんとなくね、高校生になったらお互い他に好きな人が出来てしまうんだろうなって事は気づいていたけど、
まさかこんなに早く出来ちゃうなんてって驚いた。」
話が止まって
パッ、と私は顔をあげる。
けど、美羽ちゃんも私を見ていたらしく
お互いの目線が絡み合った。
「…栄介の視線はいつもその子に向いてた。
私が話していたとしても、その子とすれ違えば視線はそっち。
だからもう、私分かっちゃって。
”ああそっか。もう私の事は見てくれないんだな”って。」
直後、クスリと笑う美羽ちゃんに驚きつつあるけれど
「栄介最低だな、って思ったでしょ?
違うの、悪いのは私。
そういう気持ちを紛らわしたくて
他の男子とも遊んだり、この世で言う浮気ってやつ。
それを知った栄介、すごく怒って。
まだ私の事好きでいてくれてるんだって、嬉しかった。
………でも
栄介と元の関係に戻っても、私の事は見てくれない。
あの子しかもう向かないんだって思ったら耐えられなくて。」