彼女がマスクを外さない


サァ…っと静かな風が吹く。

するとショートヘアーの美羽ちゃんの髪がフワフワと舞った。


綺麗な髪の毛だな、と密かに思いながらも

ポツリ、ポツリと話してくれるそれに耳を傾ける。




「”私達、もう別れよっか”
そう私から終わりを告げたの。

なんで?って聞かれても理由は言わなかった。

…ううん、言えなかった。

”私の事はもう見てくれない”
そうは分かっていても認めたくない自分もいたし

認める前に、終わらせたかった。」




ふふっ、と微笑む美羽ちゃん。

「おかしいよね、こんなの」

そう呟きながら笑顔を見せているけれど

その笑みは本物じゃない。


こんな話、するのもツラいに決まってる。




「…嫌いになって別れたわけじゃないの。

好きだよ、今でも。」

「っ、」




やっぱり、そうだったんだ…


楽しく話している二人の姿を見て

お似合いだな、と思った私。


………正直、羨ましかった。


”お似合い”

そう思われるのって、どれだけ嬉しいか。


グッ、と手に力を入れて勇気が出るように握り締める。

下唇を噛み締めて、

私は再び美羽ちゃんに向き直した。


………でも、私も負けてられない。

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