彼女がマスクを外さない



「たとえ…栄ちゃんに気があったとしても…私は、正々堂々と戦うよ」

「…………」

「だから、その……。い、以上です」




クルリと方向転換。


言いたかった事はそれだけ

言えてスッキリした。


元カノだからって気にしない

私も栄ちゃんが好きなんだもん


離したくない、一緒に居てほしい

隣で一緒に笑っていたい…




「恵美ちゃん!」




その場から立ち去ろうとした私を、美羽ちゃんが呼び止めた。

それに反応して、ゆっくりと振り向けば




「私、あなたと戦うつもりないよ」

「……え?なんで…?

あ!もしかして私じゃ相手にならないとか…!」




チビだし、栄ちゃんとの身長差激しいし、バカだし、スタイル良くないから?

美羽ちゃんと比べれば全て衰えてる。

それだと戦っても意味ないみたいな…?

「私勝ち目無い…」なんて焦りながら呟いていれば

あははっと笑う美羽ちゃん。




「違う違う!恵美ちゃんの方が勝ち目あるよ、確実に。

……私もうフラれてるからね

これ以上は迷惑になっちゃうし、

私のワガママにも付き合ってくれた栄介に

”ありがとう”って言っといてくれる?」




笑い泣きの涙か

それともツラくて泣いているのか

どちらかは分からなかったけど、指で目を拭く美羽ちゃん。

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