彼女がマスクを外さない
2day
「(あっつー…)」
昨日よりずっと暑い気温。
今日は雲ひとつない空だ。
太陽がうざいほどに眩しく輝いていて
じっとしているだけでも汗が出るくらいの暑さ。
暑い暑い、なんて下敷きでパタパタ仰ぎながら
まだ涼しい廊下に移動すれば
もうプールの時期らしくて
バシャバシャと水しぶきをあげながら泳ぐ人達が目に入る。
「あ、栄ちゃん」
「恵美?どした」
そのプールで泳ぐ人達を羨ましそうに見ていたら
この階にはいるはずのない、恵美が隣に寄ってきた。
特に何もないらしいが
俺の姿を見つけたから会いに来たみたいで。
「恵美、髪ビショビショじゃん」
「さっきプールだったの」
ちゃんと乾かせよ。
なんてちょっと過保護になる俺。
恵美の首にかけてあるタオルで
わしゃわしゃと無雑作に拭いてやれば
「ぶ、ちょ、バサバサになる」
そんな俺を止めようと必死に抵抗する恵美。
身長のおかげで本当の子供の頭を拭いているみたいだ。
「風邪引いても俺は絶対看病してやらねぇからな」
「とか言って前しにきてくれたじゃん」
「気が変わったんだよ」
「また気が変わるって」
ふふっ、とバサバサの髪型のくせに無邪気に微笑むものだから
俺は溜め息を出して再度ぐしゃりと髪の毛を無雑作に拭いた。
「のわっ」なんて女っ気の全くない叫び。