彼女がマスクを外さない
9day
「栄介!!」
「……ん、なに?」
ガタッ!と椅子が床を引きずった音と共に、俺の前の席に座る美羽。
「見て!見て見て見て!見て!!!」
夜更かしをしたせいか、眠たすぎる身体をゆっくりと持ち上げて、椅子に座り直す。
激しく俺の前にピラピラと揺らされている一枚のプリント。
それは実テの結果用紙だった。
実テは昨日終了し、俺も案外必死に勉強した結果、なかなかいい結果を出すことが出来た。
「……へぇ。赤点ないじゃん」
「でしょ!すごい初めて見たこんな数字!!」
キラキラと目を輝かせながら自身の結果用紙を見つめる美羽は、
片手に拳を作って「よっしゃ!」っと叫ぶ。
留年はまぬがれたらしく、とりあえず俺も一安心。
だが、最後の安心はまだ出来ていない。
……恵美。
そして俺は再び机に突っ伏する。
「あ、」
だけどそれを阻止するかのように、美羽が俺の身体を揺らした。
「なに?」と、少し不機嫌そうに顔を上げれば、
「あんたの大好きな子が待ってるよ」
コソッと俺に耳打ちする。
ちょいちょい、と指差すその先は
「っ……………」
俺がさっきまで考えていた子。
教室の中を気まずそうに覗き込む、恵美の姿があった。