彼女がマスクを外さない
「っ………!」
久々に見た恵美の顔。
それは勿論、マスクを付けていない姿を久々に見たという事。
少し驚いて、俺はパッと顔を背けてしまう。
「(いきなりは反則だろ…)」
多分、赤いであろう俺の顔。それを隠すかのようにして口元を手で覆い隠す。
チラッと目だけを恵美の方に向けて見れば、薄く化粧されている事にも気づいた。
「(そういや前も……)」
『なんか、あと化粧してたよな』
そう言っていた友達の言葉を思い出す。こーゆー感じだったのか。
「……………」
ジッ、と見つめていた俺。その視線に気がついたのか、恵美は恥ずかしそうに下を向く。
その反応に俺も急いで目線を逸らした。
……それにしても、なんか凝視できない。
あのマスク姿に慣れてしまっていたのか、外した途端、何故か緊張してしまう自分がいる。