彼女がマスクを外さない
「なっ……」
こういう事されたらまた理性が。と、焦りつつある俺に
ギュウゥッとその細い腕で、痛い程、抱き締められる。
「………痛いんですけど。」
「えっ。わ、ごめん」
正直言って、この体制物凄く照れる。たぶん赤い俺の顔。
「(絶対見られたくねぇ…)」
スルッ、とゆっくり離れていったそれ。だけど、振り向くのは、今は無理だ。
「栄ちゃん」
後ろから声がする。
勿論それは恵美の声で、俺の名前を呼ぶものの、振り向けないのが現実。
「(くっそ…、早くおさまれ…)」
再び口元に手を当てて、眉根を寄せる。と。
「好き。」
「っ、」
「大好き。」
「っーー。」
「好き好き好き好き。大好き!」
「ああもう分かったから…!」
バッと振り向いてしまった。
するとニヤニヤと楽し気に笑う恵美の姿が目に入る。
コイツ…っ、俺がこんな事になってるの知って楽しんでるな…