彼女がマスクを外さない
「いや、あのね。
ちょっとある人に…」
気まずそうに俺から目線を逸らす。
その目線の先に再び覗き込めば、「うっ!」と低い声を出した。
「マ、マスク付けてたら雰囲気大人っぽい、とか言われたから…」
「………は?」
マスク付けてたら、雰囲気大人っぽい?
…なんだ?その変な理由。
疑い深い目でジトーっと見つめてみれば、慌てふためいて
「ほ、ほら!私って見ての通り、この身長出し、色気ないし…
子供っぽく見えるでしょ?
だ、だから、あの。」
今度は恵美の方から目線を合わせてくる。
「……少しでも栄ちゃんの隣にいて、お似合いだなって思われてみたくて…」
「雰囲気だけ?」
「だ、だって…!身長はもう伸びる気配ないし…
顔だって整形しない限り美人になれないし…
む、胸だってせいけ」
「もういいもういい」
「(胸は関係ねーだろ…)」そう心で思いながら途中で話を止めた。