彼女がマスクを外さない
9.5day
「そんなにキスされんの嫌かよ」
「ちがっ…!嫌とかじゃなくて…」
「じゃなくて?」
屋上を後にして、ゆっくりと階段を下りていく。
3歩後ろにいた恵美がピタリと止まり、俺は下から見上げた。
「なんか、恥ずかしい、し」
「恥ずかしい?今さら?」
「今さらって!
…だって、な、なまとか久々過ぎて、ちょっと戸惑うというか…」
両手を頬にあてて「恥ずかしっ」と目を瞑る恵美に、俺は「ふっ」と鼻で笑う。
「なまって、なんかエロいな」
「エ、エロッ…!?だって言い方ないし!」
「はいはい」
急激に赤く染まっていく恵美の顔。もう湯気が出そうなくらい、真っ赤だ。
「慣れろよ、もう」
「頑張ります…」
真っ赤な顔でコクリと頷くと、そんな彼女に俺はスッと手を差し出した。
「これから毎日する事になるんだからさ」
「んなっ…!ま、毎日!?」
「当たり前だろ。ほら早く手、出して」
「んんんんーー…」
キュウッと下唇を噛み締めて、戸惑う様子を見せるけど、
俺のその手にゆっくりと伸ばされた小さな手は、俺の手を静かに包み込んだ。