無口な彼の妬かせ方




俺は彼女と喋ることでさえ、精一杯だというのに……。



空になったペットボトルをゴミ箱に捨てて、



ドアの所へと向かう。



なんだかキラキラとしたオーラが放たれているのは、気のせいだろうか。




「………どうした。」




ドアに手を掛けて、棒読み風にそう聞いてみれば、




「翔ちゃんっ!」




俺に勢いよく腕に絡みついてきたコイツ。



フワリと香水の匂いを漂わせて、ギュッとしがみついてくる。




「……おい、離れろ」


「いやー!今日一日会ってないんだから、いいじゃん!」




上目遣いで俺を見て、



高い声でキーキーと言ってくる。



あーもう。



お願いだから、声のトーンを下げてくれ。




「唯、いい加減にしろ」


「あっ、翔ちゃん怒ったぁー!」




ニコニコと笑いながら、キュッとまた強くしがみついてくる。



それに対して俺は、今日三度目の溜め息を吐き出した。



唯(ユイ)とは、もちろんコイツの名前で。



フルネームで言えば"白石唯(シライシユイ)"



唯と俺は家が隣同士の為、小さい頃からよく遊んでいた。……らしい。



あまり、記憶はないが。



まあ、ちょっとした幼馴染ってヤツだ。

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