無口な彼の妬かせ方
ドキッと心臓の速さが増す。
「待ってた」
そう言ってくれた彼の顔には、一瞬だけど、優しい笑みが。
キュンッと顔が熱くなる。
目線は元の位置に戻されて、まっすぐ前を見ている。
待っててくれたんだ……
雨の中、ずっと……
「そっかぁ……そっか!」
嬉しくなる。すごく嬉しい。
こんな優しさをみせてくれるから、妬かせたいって気持ちが大きくなる。
「この傘、早瀬くんに借りたの」
調子に乗って言ったそれ。
今なら妬かせられるかもしれないと、思いながら。