無口な彼の妬かせ方
「帰るぞ」
そう言って。
再度、教室の中にいる早瀬をジッと見てから、
クルリと方向を変えようとした時。
「翔っ」
クイッ、と。
服の袖を引っ張られた。
何?どーした。
それによって、俺の動きはピタリと止まる。
「ん?」
振り向けば、
「その子……誰?」
俺の後ろに目線を向けて、そこを指差す藍。
キョトン、とした顔でずっとそこを見つめてる。
……その子って?
疑問に思いながらも、
藍の指差す方にゆっくりと振り向いてみれば、
「しょーうちゃん!」
「なっ…!唯っ!!」
ドンッ、と。
突進するかのように俺の背中に抱きついてきたのは、
紛れもなく唯だった。