無口な彼の妬かせ方




「せっかくキャンプに来たのにさ~寝ちゃうの?」


「………だって、することないんだもん」




私だって、



ああやって川で遊びたいよ……




「ああ、そっか。水着忘れたんだっけ?」




思い出したかのように言った蓮くん。



うっ……



その言葉がグサリと胸に突き刺さる。



あまり言わないでほしいな…



ズーン、と。



暗いオーラを放つ私に対して、蓮くんは嫌なほどに笑顔だ。




「じゃあ、さ!」




ストンと私の隣に座る。




「川に入れないんだったら、水に触るぐらいはできるだろ?」




そう言って。



返事なんか聞かずに、グイッと私の腕を引っ張った。




「っちょ、蓮くん!?」




引かれるがままに連れられる私。



気がつけば、



私は川の前にいて。




「ほら、触ってみろよ。せっかく来たんだからさ!冷たくて気持ちいいぞ~」




パシャパシャと私に軽く水をかけてきた。



……ほんとだ。



冷たくて気持ちいい。



蓮くんのその行動によって、私はちょっとだけ笑顔がこぼれたんだ。


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