無口な彼の妬かせ方




「おらっ!」


「わっ…!ちょっと!」




お互いに水の掛け合いが始まって。



服が軽く濡れたけれど、



その時は全然気にならなかった。



楽しくて、楽しくて。



濡れたことなんてどうでもいいって思ってたんだ。




「あっ、ワリ。ちょっと電話!」




ピルルルッ、と着信の音。



蓮くんは私に軽く手をあげると、



携帯を片手にこの場から離れていく。



蓮くんって……



意外にいい人なんだな…



私もそれに応えるように、手をヒラリとあげた。



そしてまた、一人になる私。




「……冷たい。」




何もすることがなくなって。



私はその場にしゃがみこんだ。



手を冷たい水につけると、冷んやりと冷たくなっていく指先。



早く戻ってこないかな……



なんて考えてしまう。

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